しばらく前の話ですが、4/15にMusic Tech Meetup・音楽技術勉強会を開催しました。
オフライン勉強会を開催するのも6年ぶりで、開催するほうの状況もいろいろ変わり、基本的に自分だけで企画して回すという不安要素だらけのスタートでしたが、いざやってみたら大成功でした。メインセッションも4本のLTも最先端を突っ走る刺激的な内容ばかりで、参加者の皆さんからも、ホストしてくださったCRIミドルウェア社の皆さんからも好評で、また開催してほしいという声を多数いただいたので、次も何とか企画して回せればと思っています。ヘルプしてくださった皆さんも含め、参加していただいた皆さんありがとうございました。
音楽プログラミング言語mimium 理論と実装の詳細
mimiumの開発者である松浦さんに、世の中に実は数多のオーディオプログラミング言語がある中で、mimiumという独自の言語を開発するに至った動機、言語の概要紹介、関数オブジェクトの基盤がVMで実行されるコードの実装解説、言語機能としての多段階計算されるマクロの紹介、コンパイル時型解決による動的変更の実現性、他言語との比較と、盛りだくさんの内容を語っていただきました。APLは低レイヤーにも潜り込んだ話が自然に登場する世界であり、今回は高階関数や多段階計算といった関数型言語方面の概念もいろいろ出てくる内容だったので、みんなついてこれるだろうか…?と思いながら聞いていましたが、質疑応答も賑やかに行われていたので安心しました。
2026年に相応しい最先端プラグインホストの設計と実装
atsushienoが開発中のUAPMDについて話したものです。agentic codingの影響でDAWがいろいろ作られるようになってきたので、自分好みのDAWを作るには何が必要か、UAPMDは何をするのか、プラグインホストは何をしなければならないのか、AUv3やWebCLAPのサポートには何が必要なのか、MCPで操作できると何ができるのか、といった話を駆け足でしました。実装の話は時間の都合で断念しました(!)
さらにLTセッションが4本ありました:
- dropcontrolさんの複数トラックで別々の拍子を設定した楽曲を作る、そのためのツールを作る…という話で、この時点で一般的なDAWやシーケンサーではとても扱えないもので、その時点で十分刺激的な内容なのですが、なぜかツールではなく楽曲のほうでICMC 2026で採択されたという話だったので、ハンブルクに行かれる方はチェックしてみてください。GW明けからベルリンで始まるSuperbooth 2026も近く、行ける人がうらやましい…!
- klknnさんが開発中のhibikiというVST3用のDAWの紹介で、Windows/Mac用のプラグインをネットワークを介してLinux等でも制御できるというのが大きな特徴でした。オーディオプラグイン製品は2026年の現在でもWindows/Macのみでリリースされるものがまだ多く、yabridge (Wine) でうまく動作しない場合もあり、ネイティブプラットフォームのPCがあればそこから再生するというのは、作業に支障が出るほどの遅延がなければ安定的な解決策といえるでしょう。Closure scriptingでヘッドレス動作も指示できて、現実的な利用を意識した設計が見えるコンセプトでした。あとレトロUIも(!?)
- 余湖雄一さんのWeb Audioを使った即興ライブコーディング環境というか楽曲制作環境のデモで、「今日はライブコーディングが主題ということで…」みたいなノリでカジュアルに作られてきたようなのですが、音声入力の自然言語でその場でサンプラー音源の作成を指示して動かしてしまうという、ライブコーディング環境としては驚きの高水準機能が実現していて、とにかく驚かされました。ADC JapanでもChromiumとWebプラットフォームをもとにプラグイン開発を実現するアプローチのセッションを担当されるようなので、興味のある方はチェックしてみて下さい。ライブコーディング中に音声入力で指示するというのを見るのは初めての体験でした(!)
- ob5vrさんのGLSL Musicの話は、そのコンセプトの全体的な紹介で、GPGPU等でオーディオ処理ができるという道筋の導入、これまでのライブパフォーマンス実績、ob5vr/wavenerdを使ったライブの紹介まで、コンパクトにまとめていただきました。GLSLの得意な音のインパクトが強くて「こんな音が作れるんだ…!(でも原理を説明してもらえたので分かるっちゃ分かる)」という感想になりました。connpassページの勉強会資料から辿れるので聴いてみて下さい。この方面の方々のライブパフォーマンスや作品はSESSIONSで見ていたのですが、来月末にもDraw(tokyo); #4というイベントにも出られるようなので、興味のある方はチェックしてみて下さい。
今回はLTも含めてだいぶガチ目の内容が多く、全部理解しきれなかった人も少なくなかっただろうと思いますし、それでいいと思っていますが、ソフトウェア開発のトピックが多かったので、プログラミングの知識が無いと無理だったかもしれません。LTの時間で話せることは限られており、何人もちゃんと時間を取って話せるようにするには半日くらいの時間が必要です。
この勉強会の前後で技術書典20とM3 2026春でオーディオプラグイン研究所としてサークル参加していたのですが、プラグインフォーマットやMIDI 2.0の解説書をM3で頒布していると、プログラミングの知識は無いけどDTMはやっているのでソフトウェアの仕組みが気になる、という人が少なからずやって来て、興味を引かれてプログラマーでもないのにお買い上げに…という場面が何回か出てきます。こういう層の皆さんにももっとリーチしていけるような勉強会にしたい…とは思っていますが、基礎から勉強したい人向けの集まりと、最先端を追い求めたい人向けの集まりがブレンドするかはちょっと不透明で、まあ何でも同じ勉強会で実践するのは無理があるかもしれません。
VJも含めたアート表現にはAMCJ(拠点URLがどこなのかわからない…)やAudioVisual勉強会、ゲームサウンドも含む集まりはサウンドミニハッカソン、ハードウェア寄りのクラスタにはSynth Maker Meetupのようなイベントコミュニティがあるので、皆さんでそれぞれ向いているコミュニティを探してみてください。