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ものがたり
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2006-10-14

打越隆敏”消尽理論”論文がいただけない件

http://www.grips-ip.jp/ip/paper/MJI05042uchikoshi_abst.pdf

4−1 学説の状況
適法に取得した者の実施が侵害にならない理由としては、所有権説、黙示的実施許諾権説等が唱えられたが、現在「消尽理論」が通説であり、我が国においては、国内における消尽論については、当然成立するものとされ(中山[2002a]364 頁)、その根拠については、余り深くは議論されず、議論の中心は専ら国際消尽の成立に注がれていた。

まともな法律論文であれば、こんな低レベルなまとめ方はしないはず。この著者がどんな勉強をしてきたのかは分かりませんが、消尽理論の根拠に関して僕が習ってきたのは次の通りです。

僕が特許法を習ったときは、既にBBS判決が出ていて、黙示的同意論というのは(明示的同意があればOKと言えるのか?という点で)いただけない説だ、ということも講義を経てならっていたものです。

僕が学生の頃はあまり考え無しだったので、取引安全論か二重利得機会論かどちらかでいいんじゃなーい?みたいなことをテストに書いた記憶があるのですが、二重利得機会論を必要条件的な根拠に、取引安全論・黙示的同意論を付帯条件的な根拠に、それぞれしておかなければならないでしょう。というのは、

閑話休題。

この打越なる人物が提唱している「特許権料については黙っていて、後から徴収する」というモデルは、さまざまな問題をはらんでいます。

僕は、この提案はかえって市場をインモラルにするだけで、プラスの効果は見込めないと思いますが、どうでしょうかね。

報酬請求権的構成への転換

上記論文を見ていて気付いたことがもう一つあったのですが、この論文は特許権が禁止権的構成であることを完全に無視して論じているんですね。すなわち、特許製品転取得者に対して、報酬請求権ではなく禁止権を行使するかもしれないという点を考慮していないわけです。

とはいえ、僕はここでまた打越論文を否定したいわけではありません。むしろ、プロパテント・アンチパテントのどちらの陣営でも、特許権が禁止権的構成であることは既に意識されていないということですから、特許法は報酬請求権的構成に切り替わるべきなのだ、ということがハッキリと見えてきたように思います。その意味では、この論文は前向きに評価できるのではないかと思います。

実のところ、逝って良しなトンデモ論文だとすら思っていません。取引安全を害する態様での契約を競争法に基づいて規制しよう、という考え方は、理論構成としては比較的筋が通っています(とはいえ、現実的に競争法に基づいて規制というのはかなり薄っぺらいものしか想定できないので、この論文からは無責任な雰囲気が大いに感じられますが)。ここでは当然に、特許法も独占禁止法の適用を受けることが前提になっていることにも留意すべきでしょう(これは公正取引委員会における独禁法21条解釈にも適合します)。


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